皆様、土地家屋調査士という国家資格をご存じでしょうか?土地家屋調査士とは、不動産の登記簿(登記記録)の「表題部」の新設、変更・更正、閉鎖等の代理申請を行う土地建物の表示登記の専門家です。
今回は平成18年から施行された「筆界特定制度」の基礎知識についてお話しします。
筆界(ひっかい)特定制度とは、土地の所有者として登記されている人などの申請に基づいて、官界特定登記官(法務局)が、外部専門家である筆界調査委員(土地家屋調査士、弁護士等)の意見を踏まえて、現地における土地の「筆界」の位置を特定する制度です。
■筆界とは?
筆界特定制度は「境界」特定とはなっておらず、「筆界」特定となっています。
専門的に「境界」について考える場合、大きく「筆界」と「所有権界」の違いを理解する必要があります。
不動産登記法では、「筆界」で囲まれたひとつの土地を「一筆の土地」と呼び、それぞれに地番をつけることになっています。よって「筆界」は地番と地番の境のことです。要するに土地の本来の境界線のことです。このように、「筆界」は法律によって定められた境界ですので「公法上の境界」とも呼ばれ、隣接所有者同士の意志で勝手に変更することはできません。
対して「所有権界」は元々の境界=筆界とは違う線で当事者間の合意により一部譲渡したりして変更できる所有権の境の事です。通常は「筆界」と「所有権界」は一致しているものですが、「筆界」と「所有権界」の認識の違いからトラブルとなるケースがあります。
【筆界と所有権界が違う例】
1番と2番の土地の筆界は元々2点曲がっており、お互い使いにくい状況だったので、お隣同士話し合って同面積を交換し、まっすぐな線で境界を引き直した。(専門的ではない一般的な表現)
しかし、当事者間の合意のみで、登記は行っていないので、このままでは土地は売却できないと言われた。
1番と2番の所有者はお互い納得しているので、問題なさそうですが、登記上筆界は上の図のままであり、所有権界のみが変わったということになります。この場合、登記と現状を一致させるには1番と2番の土地をそれぞれ分筆して、それぞれ分けた部分の所有権移転登記を行う必要があります。この例のように筆界と所有権界が違う事が時折起こります。
<ポイント>
○筆界特定とは,新たに筆界を決めることではなく、実地調査や測量等様々な調査を行った上、
元々の筆界を筆界特定登記官が明らかにすることです。
○筆界特定制度は、土地の所有権がどこまであるのかを特定することを目的とするものではあり
ません。所有権界の争いについて筆界特定で解決してもらえるものではありません。
■筆界特定はどんな時使えるの?
・分筆登記や地積更正登記の為に必要な隣接土地所有者の立会の協力が得られない時
・立会はしたものの筆界についての争いがある時
・捜索したのにも関わらず隣接土地所有者の行方がわからない時
<ポイント>
○筆界特定制度を活用することによって、公的な判断として筆界を明らかにできるので、裁判を
しなくても、筆界の問題の解決を図ることができます。
○筆界特定の結果に納得ができないときは、後から裁判で争うこともできます。
今回は筆界特定の基礎知識をお話ししました。
相続される予定の土地の隣地との境界線で問題がある場合、直ぐに分筆登記が出来ないケースもありますので、お近くの土地家屋調査士にご相談ください。