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超高齢化社会における相続問題

2009.05.15

資産家のAさんがある日突然倒れ、亡くなってしまいました。遺言書はなく、相続人は、数年前から認知症で施設に入っているAさんの奥様と、長男、長女の3人です。
遺言書がありませんので、遺産分割については相続人同士の話し合いで決めることとなりますが、奥様は自分の意見を言うことも考えることも出来ない状態です。だからと言って、子供達だけで分割方法を決めても無効です。
慌てた子供達が当サポートセンターに駆け込んできたのは、Aさんが亡くなってから4ヶ月目のことでした。当方からは、認知症の奥様の意見を代弁する保護者(成年後見人)が必要であること、そのためには家庭裁判所に申立てて成年後見人を選任してもらう必要があることを説明しました。


ただし、成年後見人の選任までには数ヶ月を要するのが通常です。亡くなったAさんの遺産額から考えて明らかに相続税の申告と納税が必要ですが、その期限は相続開始から10ヶ月。それまでに成年後見人が選任され分割協議を整えることが出来るかどうか、かなり厳しい状況です。もし分割協議が整わなくても、子供達は期限までに申告と納税をしなければなりません。ところが、遺産分割が整っていなければ、原則として亡くなったAさんの預金を使うことが出来ません。何億円という預金があるのに、一銭たりとも動かすことが出来ないのです。子供達は自分の手持ち預金で一旦納税するしかありませんが、とてもそんなお金は無いとのこと。子供達の顔は見る見る青ざめていきます・・・

 

超高齢化社会が到来しています。クローズアップされているのが、「認知症」の問題です。判断能力が無くなってしまうと、様々な面で支障が出てきます。自分で自分の財産を管理したり、様々な法律行為・契約行為をしたり、医療や介護サービスの利用手続きが出来なくなります。このようなことを予想し、平成11年に民法が改正され、成年後見制度が導入されました。成年後見制度は、判断能力が不十分な人に保護者をつけることで、本人の権利を守り、快適に生活できるようにするための制度です。「法定後見」「任意後見」の2種類があります。

 

<任意後見契約>

まだ自分が元気で判断能力があるうちに、将来判断能力が不十分となったときに備えて、自分の後見人になってもらう人と依頼する内容を決めて契約を結んでおくことが出来ます。これが「任意後見契約」です。もちろん、相手の同意が必要です。
任意後見契約は、公正証書で作成しなければならないことになっています。委任者(本人)と受任者双方で公証役場に行くことになります(本人が病気などで公証役場へ行けない場合は、公証人が出張してくれます)。任意後見契約の公正証書が作成されると、公証役場から法務局に契約内容が通知され、法務局に登記されます。
その後、実際に本人が十分な判断が出来なくなったときには、本人や一定の親族が家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し出ます。後見監督人とは、後見人を監督する人のことです。申し出に応じて裁判所が任意後見監督人を選任したときから、後見制度が開始します。予め頼んでいた特定の人が成年後見人となり、要介護認定の申請やサービス契約を行ったり、財産の管理をしてくれるのです。

 

<法定後見制度>

任意後見契約を結ぶ前に本人の判断能力に問題が生じた場合はどうすればいいのか?その場合に利用するのが、法定後見制度です。一定の家族等が、家庭裁判所に後見開始の審判の申立てを行います。後見人の候補者を家族が推薦することは出来ますが、最終的に後見人を選ぶのは裁判所です。場合によっては、候補者ではなく司法書士や弁護士が選任されることもあります。裁判所は、医師等による精神鑑定・親族への意向照会・本人調査等を踏まえて審理し、審判の確定を行います。申立てから審判確定までにかかる期間は、個々の事案によりますが、一般的には2ヶ月から4ヶ月程のようです。審判が確定すると法定後見が開始され、法務局に法定後見開始の事実についての登記がなされます。

 

<高齢期のトラブルへの備え>

相続対策はあくまでも自分が亡くなった後の様々なトラブルを防止するためのものですが、相続に至る前の高齢期のトラブルへの備えもそれ以上に重要です。自分の判断能力が衰えたときに備えて、身体の介護や財産の管理を安心して任せておける人に頼んでおきましょう。まだ元気でしっかりしているうちに、あなたの意思で信頼出来る相手を選び任意後見契約を結んでおくのです。
任意後見契約を結んでいなかった人のために法定後見制度もありますが、その場合は既に本人の判断能力に問題が生じているということなので、本人の意思や希望は反映されません。また、後見開始の審判を申立ててもすぐに後見人が決まるわけではありませんので、早急に何かを処理しなければならない場合には、困ったことになります。更に、本人以外の人が必要に応じて迅速に法制後見の手続きをしてくれるという保証もありません。備えあれば憂い無しということです。ちょう

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筆者紹介

江頭 寛
福岡相続サポートセンター
代表取締役社長

生前対策から相続発生後の申告・納税に至るまで、皆様から寄せられる無料相談への対応や、希望する幸せな相続の実現に向けての対策立案と実行支援を、弁護士・税理士・司法書士・不動産鑑定士等の先生方をコーディネートしながら日々やらせて頂いてます。お客様にとってベストな相続並びに資産の有効活用を徹底的にサポートすることが私の最大の使命です。また、相続対策セミナーも全国各地で積極的に開催中。まずはお気軽にご相談ください。

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